2015年1月22日木曜日

大寒に入りました、冬も終盤に

つい先日、今週の初めのこと、ある方が「大寒」に入ったことを書かれておられました。友人から頂いた『日本の七十二候』(普游舎/2014)を開けて、暦を見てみると、今週の1月20日から2月3日までの15日間。

今まで、太陰太陽暦に基づいた、七十二候どころか、二十四節気というものも、あまり意識していませんでした。もちろん、季節の移り変わりを野外で見つけることは大好きなのですが。節気でいうと、冬の期間は、「立冬」「小雪」「大雪」「冬至」「小寒」「大寒」の6節気に分かれているんですね。「立冬」「冬至」くらいしか、意識したことがなかったです。「小寒」「大寒」も耳にしていたものの、「大寒」が、冬の節気の最後にあたるとは、全く知らなかったのです。

太陰太陽暦は、太陰暦と太陽暦を合わせ、季節のずれが出ないように調整された暦なのだそうです。七十二候というのは、二十四節気をさらに3つ、「初候」「次候」「末候」に分けた暦なのですね。

つまり今日、1月22日は、「大寒」の「初候」と呼ばれるのです。

前置きが長くなりました。

「大寒」に入り、あと2週間弱で、「立春」、春の到来となるのです。冬も、終盤に入ったのだなあ。

単なる暦の上だけではないです。特に、この辺り、英国の南ウェールズ地方は、英国でも気候が穏やかで、冬でも零下に気温が下がることも滅多にありません。

春の兆しは1月の終わり辺りから感じることができます。冬至を過ぎれば、太陽の光が日一日と、明るくなってくるのがわかります。冬の間は、ぼうっと黄味がかった日射しだったのが、少しずつピントがあって、外の輪郭がきりりとしてきて、色もはっきりしてくるような。

うちの庭にも、春のきざしを見つけました。


ハシバミの黄色い雄花。ハシバミというより、ヘーゼルナッツの木という方が馴染みあるでしょう。雌花もあるのですが、赤いガクのついた2、3㎜ほどの小さい小さい花です。枝の節のところどころについているのですが、目をこらさないと見つかりません。

 

冬の殺風景な庭に彩りを与えてくれるのが、これも黄色の、マンサクの花。英語名は、witch hazel(ウィッチ・ヘーゼル)。ヘーゼルという名がついていながら、マンサク科(Hamamelis/ハマメリス)、カバノキ科のハシバミとは全く別の種類です。細いリボンのような花は、結構長いこと、1か月以上は枝についていて、目を楽しませてくれます。ハマメリスは、止血作用があるとかで、子供たちが小さい頃から鼻血止め用のホメオパシーのレメディを常備しています。自分でレメディを作るつもりはないけれど、この木を植えたいなと思い立ったのが数年前。半日陰ながら、毎年、1月になると、黄色い花をいっぱい咲かせてくれます。


そんな半日陰の茂みの下では、ひっそりと緑の芽を出してきている植物たちがあります。トネリコの大木の葉が、秋にどっさり落ち、その下で寒さから守られているのでしょう。1月を過ぎると、lords-and-ladies( ローズ・アンド・レイディス、学名:Arum maculatum /アマムシアルム)のつややかな緑色の葉っぱがお目見えします。サトイモ科なんだそうですが、初夏に咲く花を見ると、この名前の意味がわかります。まるで、貴族がハイカラーの装束を身にまとった姿のようなのです。今は、このつやつや鮮やかな緑だけですが。

そして、スノードロップ。うちの庭には、いつも1月半ばになると、同じ場所に、ちょこっと顔を出してきます。今年も、前日の大嵐の雨しぶきで泥だらけになりながらも、可愛らしい姿を表わしました。うちのスノードロップは、小さく、10㎝にも満たないほど。来週辺りに花が開きそう。歳時記では、「フキノトウ花咲く」です。英国ウェールズでは、スノードロップ。まもなく冬も終わりです。










2015年1月1日木曜日

「明けましておめでとうございます」 睦月ー1月:セイヨウアザミ Ground Thistle: January 2015 

新年あけまして

おめでとうございます

ブログを立ち上げ、3年目に入ります。日本語ブログも、昨年から始めました。3年目になった英国の葉っぱカレンダー作り。最近は、切り絵を中心に制作していますが、カレンダーは3年前から同じ、日本のビニール板を使ったレリーフ版画。

今年からは、カレンダーに登場する植物の話を毎月書くことにしました。選んだ12種類の葉っぱには、それぞれ愛着があります。英国ウェールズの自然の中で見つけた、ささやかな草木の物語、みなさんにも共有して頂けると光栄です。

これからもよろしくお願い申しあげます。


睦月ー1月:軸なしアザミ

真冬の野原で見つけた、一風変わったアザミ

(Ground Thistle, stemless thistle, Cirsium acaule, stemless thistle, daisy family)





冴え冴えとした寒い朝。といっても、英国の西南部、ウェールズ州の東南部のこの辺りは、零下になることは滅多にありません。気温6℃。しかし、冬の寒さを噛みしめるには十分な寒さ。雨がちな冬の毎日、時には晴れ間も出ます。そういう時、近くの野原や森へ散歩へ行きます。

我が家のある住宅街のはずれから次の住宅地、村に至るまで、馬や羊の農場があり、その間に野原や林やらがあります。牧草地や野原は、一面、青々とした緑。こちらの芝生は、日本と違って、柔らかい葉で冬の間も枯れない種類のようです。芝生を歩いていくと、芝生だけでなく、実にたくさんの野草が見え隠れしているのを発見します。(だから、なかなか散歩にならない。道草ばっかり)

クローバー、タンポポ、キンポウゲ、オオバコなどが、踏みつけられて平たくなりながらも健気に緑の葉を芝生の間で張り出しています。その中に見つけたのが、セイヨウアザミの1種、ground thistle、名前の通り、地面に這いつくばって生えるアザミです。またの名を、stemless thistle、これも外見から、茎なしアザミ。

一口にアザミ、こちらではセイヨウアザミ、といってもその種類は数えきれないほど。アザミはデイジー(ヒナギク)に属する、非常に生命力の強い野草です。私が野原で見つけたこのアザミも、踏みつけられて、平たくなったのかと思いました。

このアザミの名前を見つけ出すのは一苦労でした。よく似た小さな種類に、dwarf thistle、小型アザミがあります。同じように、野原などで見かけます。花も小さいですが、葉も小さく、先端や切れ込みにあるトゲもそんなに刺々しくありません。茎なしアザミの方は、葉が大振りで、表面には細かい毛がびっしり、トゲも長く鋭く、素手では触れそうにもありません。

この茎なしアザミを見つけた朝、葉の表面の細かい毛の1本1本が朝露に包まれ芝生やクローバーなどの鮮やかな緑の中に、ぼうっと幻想的な青緑色に浮かび上がったように見えたので、見つけたのでした。夏であれば、他の草も高く生い茂って気がつかなかったでしょう。

ところで、私の持っている本の中に書いてある一節(英語版の方に掲載しています)によると、茎なしアザミは、昔ほど見られなくなったということです。石灰質の原っぱや丘(英国南部は、石灰質の土地が多い)が小麦畑に開拓されたことが一因のようです。小麦は、やや酸性がかった中性土質で生育するので、石灰質を好む茎なしアザミが育ちにくくなったこともあるだろうし、除草剤によって枯れ果てていったとも言えるでしょうね。

となると、私が見つけた茎なしアザミは、衰退しつつある貴重な植物の一種? もちろん、農業、園芸の観点からすると、雑草です。が、人間の勝手で変えられていった自然の土壌から一方的に追い出されていった茎なしアザミ。こんなところで、それでもしっかりと根づいているのを見つけて、嬉しくなりました。

茎なしアザミが生えている野原は、我が家のある町と隣村の間にあります。この辺りは、海辺に近い丘陵地帯で、町や村などの集落は、野原や森などに囲まれています。でも、今では野原や森が、町や工場地帯に囲まれているという方が的確かもしれない。。。

夏の終わり頃、雨が降らずに乾燥した日が続くと、ふわーりふわりと、野原辺りを綿毛が飛んでいきます。農地から追い立てられた茎なしアザミの綿毛も、いつかずいぶん前に、やってきたのかもしれません。

衰退しつつある野草は、英国の中だけでも数えきれないほどあると思います。私の英国葉っぱカレンダーにも、これから何種類か登場しますので、お楽しみに。