2015年1月1日木曜日

「明けましておめでとうございます」 睦月ー1月:セイヨウアザミ Ground Thistle: January 2015 

新年あけまして

おめでとうございます

ブログを立ち上げ、3年目に入ります。日本語ブログも、昨年から始めました。3年目になった英国の葉っぱカレンダー作り。最近は、切り絵を中心に制作していますが、カレンダーは3年前から同じ、日本のビニール板を使ったレリーフ版画。

今年からは、カレンダーに登場する植物の話を毎月書くことにしました。選んだ12種類の葉っぱには、それぞれ愛着があります。英国ウェールズの自然の中で見つけた、ささやかな草木の物語、みなさんにも共有して頂けると光栄です。

これからもよろしくお願い申しあげます。


睦月ー1月:軸なしアザミ

真冬の野原で見つけた、一風変わったアザミ

(Ground Thistle, stemless thistle, Cirsium acaule, stemless thistle, daisy family)





冴え冴えとした寒い朝。といっても、英国の西南部、ウェールズ州の東南部のこの辺りは、零下になることは滅多にありません。気温6℃。しかし、冬の寒さを噛みしめるには十分な寒さ。雨がちな冬の毎日、時には晴れ間も出ます。そういう時、近くの野原や森へ散歩へ行きます。

我が家のある住宅街のはずれから次の住宅地、村に至るまで、馬や羊の農場があり、その間に野原や林やらがあります。牧草地や野原は、一面、青々とした緑。こちらの芝生は、日本と違って、柔らかい葉で冬の間も枯れない種類のようです。芝生を歩いていくと、芝生だけでなく、実にたくさんの野草が見え隠れしているのを発見します。(だから、なかなか散歩にならない。道草ばっかり)

クローバー、タンポポ、キンポウゲ、オオバコなどが、踏みつけられて平たくなりながらも健気に緑の葉を芝生の間で張り出しています。その中に見つけたのが、セイヨウアザミの1種、ground thistle、名前の通り、地面に這いつくばって生えるアザミです。またの名を、stemless thistle、これも外見から、茎なしアザミ。

一口にアザミ、こちらではセイヨウアザミ、といってもその種類は数えきれないほど。アザミはデイジー(ヒナギク)に属する、非常に生命力の強い野草です。私が野原で見つけたこのアザミも、踏みつけられて、平たくなったのかと思いました。

このアザミの名前を見つけ出すのは一苦労でした。よく似た小さな種類に、dwarf thistle、小型アザミがあります。同じように、野原などで見かけます。花も小さいですが、葉も小さく、先端や切れ込みにあるトゲもそんなに刺々しくありません。茎なしアザミの方は、葉が大振りで、表面には細かい毛がびっしり、トゲも長く鋭く、素手では触れそうにもありません。

この茎なしアザミを見つけた朝、葉の表面の細かい毛の1本1本が朝露に包まれ芝生やクローバーなどの鮮やかな緑の中に、ぼうっと幻想的な青緑色に浮かび上がったように見えたので、見つけたのでした。夏であれば、他の草も高く生い茂って気がつかなかったでしょう。

ところで、私の持っている本の中に書いてある一節(英語版の方に掲載しています)によると、茎なしアザミは、昔ほど見られなくなったということです。石灰質の原っぱや丘(英国南部は、石灰質の土地が多い)が小麦畑に開拓されたことが一因のようです。小麦は、やや酸性がかった中性土質で生育するので、石灰質を好む茎なしアザミが育ちにくくなったこともあるだろうし、除草剤によって枯れ果てていったとも言えるでしょうね。

となると、私が見つけた茎なしアザミは、衰退しつつある貴重な植物の一種? もちろん、農業、園芸の観点からすると、雑草です。が、人間の勝手で変えられていった自然の土壌から一方的に追い出されていった茎なしアザミ。こんなところで、それでもしっかりと根づいているのを見つけて、嬉しくなりました。

茎なしアザミが生えている野原は、我が家のある町と隣村の間にあります。この辺りは、海辺に近い丘陵地帯で、町や村などの集落は、野原や森などに囲まれています。でも、今では野原や森が、町や工場地帯に囲まれているという方が的確かもしれない。。。

夏の終わり頃、雨が降らずに乾燥した日が続くと、ふわーりふわりと、野原辺りを綿毛が飛んでいきます。農地から追い立てられた茎なしアザミの綿毛も、いつかずいぶん前に、やってきたのかもしれません。

衰退しつつある野草は、英国の中だけでも数えきれないほどあると思います。私の英国葉っぱカレンダーにも、これから何種類か登場しますので、お楽しみに。

0 件のコメント:

コメントを投稿