2014年3月9日日曜日

春を探しに森歩き

3月になり、ようやく雨も少なくなり、春めいてきました。この冬は、英国中が水浸しになりました。大きな低気圧が、これでもかというくらい何度もウェールズを襲い、毎日のように雨が降りました。雨の多いウェールズでも記録的な降水量でした。

今朝は、朝からすっきりした青空。風もほとんどなく、窓を開けるとクロウタドリ(black bird)や、コマドリ(robin)たちの透明なガラスをころがすようなさえずりが聞こえてきます。彼らのさえずりが早朝から聞こえ始めたら、春です。ずっとずっと前、大学時代、ドイツに短期滞在したのが早春。その時に、まだほの暗い朝に、窓から聞こえてくる冴え冴えとした鳥のさえずりに聞きほれたのを思い出します。それが、初めて聞いたクロウタドリの声でした。ドイツ在住時代にも、クロウタドリのさえずりに春の訪れを感じていましたが、十数年前に英国に住まいを移した時、彼らのさえずりが聞こえてきたのは嬉しかったです。

今日は、散歩日和です。温度計を見ると、すでに10度以上。今までの厚いコートはやめて、薄いアノラックという軽装で出かけました。

森のはずれの駐車場に車を停め、森の中を歩き始めました。数週間前に歩いた時より、地面はしっかりしてきていましたが、まもなく、地面が割れた場所に遭遇。あまりにも雨が降りすぎたために、地盤がゆるみ、道の部分が崩れたようです。半分になった道を、反対側から来る人たちと譲り合いながら通り抜けました。たいがい、ウォーキングルート(footpath)の岐点には、ゲートがありますが、そこに地割れのために通行不可能という貼り紙がありました。反対側から来た私たちの方には貼り紙もなかったので、知らずに歩いてしまいましたが、遅かりし。



この一帯には森がいくつか点在していて、その間には、草原や小川、湿地帯などがあります。初めの森を抜けると、陽当たりのよい場所のあちこちに、野草が咲き始めていました。プリムラや、レッサーカレンディン、スイセンなどが可愛らしい黄色の花を咲かせています。野性のプリムラは、栽培種よりひと回り小さく、愛らしいクリーム色の花をつけます。私の大好きな花の一つです。日本にいた頃には、赤や紫などの鮮やかなプリムラしか知らなかったですが、この野性の淡いクリーム色の小さな花には勝てないでしょう。レッサーカレンディンは、バターカップ属らしく、つやつやした花弁が黄色をいっそうキラキラと輝いてみせます。うちの庭の一部にも群生しています。いったんはびこるとめったなことで、除去できないほどの生命力なのです。でも、森の中では、春をいっそう華やかにしてくれますね。スイセンにはいろいろな種類がありますが、野生化している小ぶりな黄色い水仙も、周りを明るくしてくれます。ブナ林の端っこの陽当たりのよいところに点在して花を咲かせていました。




そして、白いウッドアネモネの花。初めて見たのが、この森でした。早春の落葉樹の木立の間、木漏れ日の中で、白く小さな可憐な花を咲かせ始めていました。これから5、6月まで咲き誇ります。直径が3、4センチという小さな花で、栽培されているアネモネと同じ種類なのかというほど小さいものです。もう少しすれば、ウッドアネモネの群生が一斉に花盛りになります。



ブナ林には、ワイルドガーリックがそこいら中びっしりと芽吹いていました。5月頃になると、白い花が咲いて幻想的な風景になります。が、今日はここで、柔らかい葉っぱを少し摘み取らせて頂きました。林沿いの道から、2本のステッキ(ノルディック・ウォーキングかな?)をついて歩いていた年配の男性が、にこやかな顔をこちらに向けて
「ほう、ワイルドガーリックのサラダを食されるんですか』
と尋ねられました。
「はい、たぶん」
と、私。ペーストを作ることしか考えていなかったけれど、サラダというのもいいなと思ったわけです。ガーリックの若葉だけでは強烈すぎるだろうし、他のサラダの葉っぱと混ぜて、バルサミックビネガーとオリーブオイルのシンプルなサラダ。

若葉を摘んでいる間にも、林沿いの道を、子供や犬を連れた人々が春のひざしを浴びながらゆったりと歩いて行きます。このところ、めったに散歩の人を見ることもなかったのに、みんな春を待ちかねていたのですね。子供や犬たちは、もう嬉しくてしかたがないように歩いていられず、走り回っています。それを見る大人たちのまなざしも柔らかいのです。

ブナ林の向こうは湿地帯。歩いていると、なんだか赤いバラの花びらが落ちているような。近寄ってよく見れば、赤いキノコ。毒々しい色なのですが、キノコには虫喰い跡があります。おそらく毒キノコではないでしょうが、キノコは形と色を楽しませてもらうだけにします。


 森を抜けると、再び透き通るような青空が広がっています。ネコヤナギの種類でしょうね、ふくふくとした雄花が目を引きました。植物や動物たちは、長くじめじめした冬の終わりを感じて、みんな動き始めているんですね。

さて、帰宅してからワイルドガーリックの若葉を洗いました。今日は、これを使ってディップを作ろうと初めから考えていました。水でホコリなどを洗い流した葉っぱはつやつや新鮮。ニラ系の香りが漂ってきます。


包丁でざく切りした葉とバージンオリーブオイル、塩少々を加えて、ブレンダーで混ぜるとペーストの出来上がり。ここに、普段ならギリシャ風ヨーグルト(クリーミーな濃厚ヨーグルト)を加えるのですが、今日はフロマージュ・フレしかなかったので、代用。それでも、まあまあOK。帰ってきてから、パン生地(パン焼き機があるので、生地作りは非常にラク)を用意し、小ぶりのパンを焼きました。夕食は、サラダに、ゆで卵、アボカドなどを添えて。ディップは、パンにつけてもよし、ゆで卵やアボカドにも合いました。ベジタリアンソーセージも用意したのですが、これにも合いました。去年を思い出しました。ソーセージなどの肉類に添えると、臭みがとれて美味だったのです。ギョウザのニラ代わりにもなります。これからが旬なので、次回には肉料理にしようかな、などと考えてしまいます。野性の植物を食卓でも大いに楽しめる季節がやってきました。




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