如月ー2月:スノードロップ
一番に春を告げる可憐な花
(Galanthus nivalis, Fair Maids of February, lily family)
(ヒガンバナ科 ユキノハナ)
(ヒガンバナ科 ユキノハナ)
'Fair Maids of February' ー 二月の可憐な娘たちー とでも訳したらよいでしょうか。'Fair'という形容詞には、さまざまな意味合いがあります。直接的、視覚的に訳せば、濁りのない、清々しい白い花びらの色から、「色白の」という訳が適当でしょうね。でも、色白の'Maid' (少女、娘、乙女)というのであれば、雰囲気から「美しい」とか「魅力的」な感じにも受け取れます。清々しい白と、少しぼうっと霧のかかったようなうす青緑色の葉の印象から、あっけらかんと明るい夏の花達とは違って、私は「可憐な娘たち」と呼びたいのです。(ちなみに、朝日新聞社の『花おりおり』2003年第8版では、「二月の美しい少女」となっています)
私の手元に、20世紀初めに出版された復刻版(といっても、それも1977年出版の古本)の『エドワード朝の一婦人によって書かれた田園日記』(原題:The Country Diary of An Edwardian Lady)があります。作者のイーディス・ホールデン(Edith Holden)は、日本でおなじみの『ピーターラビット』の作者、ベアトリクス・ポッターと同じ時代を生きた女性です。ポッターと同じく、彼女もナチュラリスト、自然主義者として、自然の中の生物の描写を数多く手がけたそうです。20世紀の初め、この二人の女性が、イラストレーターとして活躍するまでの背景は、おそらく大変なことだったでしょう。
話がそれましたが、ホールデンの本の、「2月」の章で、'Fair Maids of February'という言葉を見つけたのです。スノードロップの描かれたページには、19世紀前半に活躍した詩人、Hartley Coleridgeの2月についての詩が引用されています。うちの町に、Coleridge Avenueという通りがありますが、おそらくこの詩人の名を取ったのでしょうね。でも、詩については全く知りませんでした。また余談。
「…まるで揺らめく青白い火のように、冷たい大地を緑の鋭い葉で貫く…」
なんだか、氷の女王のような印象を受けますが、実際は、小さくて可憐です。葉っぱも、スイセンに似て、先っぽは、とんがっていません。ちなみに、スイセンもスノードロップもヒガンバナ科に入るので、葉っぱが似ているのですね。
うちの庭に毎年、同じ場所に登場するスノードロップは、10㎝あるかないかの高さで、小さくかわいらしいものです。
前回のブログに書いたように、今年は、1月の半ば頃に、すでに小さなつぼみをつけ始めました。Woodland Trustという英国の森林やそこに生息する動植物を保護維持するボランティア団体によれば、スノードロップを初め、春先に花咲く植物は、過去25年ほどの間の観察で、毎年、開花が早まっているそうなのです。温暖化の影響なのかもしれないですが、1月あたりに、気温が高まり、春のような陽気に、植物だけでなく冬眠していたカエルなどの動物たちも活動を始めてしまうことも。ただし、寒の戻りで、霜が下りたりすると、やわらかい繊細な若葉や、動物たちはダメージを受けてしまう危険があるのだそうです。
Woodland Trustの運営するフェイスブック・ページには、1月下旬から続々とスノードロップ開花の写真が、寄せられています。つい先日には、うちの町にある、オープンして間もない花屋さんの店先に、小さなつぼみをつけたスノードロップの小鉢が並んでいました。
「2月の可憐な娘たち」が「1月の可憐な娘たち」と呼び名が変わってしまわないように!
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