2015年4月13日月曜日

イースターの月曜日に: St Bridges Majorにて散策

イースターの月曜日。久しぶりの青空、風もなく暖か。車で半時間ほど西へ行った、海に近い小さな村、St Brides Majorまで出かけました。村はずれに車を停め、丘を登っていくと、そこには壮大な風景が広がっていました。大きな木は全くなく、gorseという荒れ地によく見られるマメ科の黄色い花が一斉に咲いていました。反対側では、羊の群れがのんびりと草を食んだり、ねそべっていたりしていました。この春に生まれたばかりの子羊たちも。


丘をぐるりと歩くと、下り坂に。要所ごとにウォーキング用のサインがあります。それに従って急な道をすべらないように気をつけて歩いていきます。


丘のふもとには、小さな川が流れています。小川というにはちょっと大きく、川というには小さめかというサイズ。途中に、分岐路があるのですが、徒歩だとステッピングストーン、飛び石がある(写真左から斜め右)のですが、車は、何と川の中を通るのです。とはいえ、川底は浅く、車が通れるように平らにしてあります。私たちが見ている間に数台が通り抜けましたが、ほんの少しちゅうちょした後、えいやっとばかりにエンジンをふかして向こう岸へ渡っていきました。

右端にいる女性は、水から十分離れてなかったばかりに、足元がびしょぬれになりました。犬くんは、おかまいなしに川の中をじゃぶじゃぶと走り回っていました。何せ、久しぶりのお天気で、おまけに風もなくあったかかったのですから。


川沿いの道には、2か所、石造りの鉄橋がありました。その下を、ポニーに乗った女の子が、お母さんとおしゃべりしながらのんびり通り過ぎました。


この川には、もう一つ向こう岸に渡れる橋があります。Clapper Bridgeと呼ばれ、アーチ型や吊り橋などができる以前に使われた古いタイプだそうです。どのくらい古いかは不明ですが、昔は、周辺の村の住民が生活のために使ったのでしょうね。


川から逸れて、村の方へ戻る途中に、自然保全地域があります。スイセンやウッドアネモネ(3月のカレンダーに登場)が自生しています。スイセンは、もう盛りを過ぎていましたが、ウッドアネモネの白い花があちこちに咲いていました。


自然保全地域が終わると、生け垣に両面囲まれた農道になります。途中で、乗馬クラブのグループとすれ違いました。一人一人が、「待ってくれてありがとう」と良いながら通りすぎていきました。10人以上はいたでしょう。

彼らが過ぎていった後、ふと傍らを見ると、「卵売ります」のサインが。そこには小さな石造りのコッテージ。ちょうど卵を切らしていたところなので、卵を買おうと裏側へまわると、そこの主らしい男性がいました。

にこやかな彼は、私たちが道に迷ったのかと思ったらしいですが、卵を買いたいと言うと、ちょうど1ダースあると出してくれました。彼から1ダースの卵を買いました。1ダース、放し飼いの鶏の卵2ポンド。とってもお買い得です。卵は3種類。さまざまな色と大きさのもの。彼は、レグホン種と烏骨鶏のものだと教えてくれました。

後日、卵を食べましたが、とっても新鮮な卵で濃厚な味でした。普段でも放し飼いと書いてある卵をスーパーで買っているのですが、断然の違い。


帰路は、海辺を通って帰りました。たくさんの車と人であふれ帰った海岸を横目に通り過ぎました。私たちの歩いた道では、ほんの数グループとすれ違っただけ。みんな、短くとも「ハロー」と挨拶を交わしました。その他は、さえずる小鳥たちの声、小川のせせらぎだけ。

2015年4月1日水曜日

卯月ー4月:ウッドアネモネ Wood Anemone: April 2015

卯月ー4月:ウッドアネモネ・ヤブイチゲ

白くきらめく風の花 


(Anemone nemorosa, Windflower, Buttercup family)
(キンポウゲ科 イチリンソウ属)


変わりやすい春のお天気。明るい晴天の朝を迎えても、彼方にみじんの雲も見えなかったのに、お昼ころになると、にわかに空がかき曇り、肌寒い風が吹いてきたかと思うと、通り雨、時にはアラレも混じることもあります。

4月に入ると、それでも日射しは日ごとに強くなり、日も長くなってきて、春も盛りに入ったことを感じます。

お気に入りの森へ踏み入れると、ブナの木が主に生える、その足元に点々と白い花が目につきます。さらに歩いていくと、あちらこちらに、白い可憐な花びらを一面に敷いたような場所に出くわします。可憐な花が、じゅうたんを敷き詰めたように咲き乱れる様は、幻想的です。

たまに、霧雨の中を歩くことがあります。風もなく、霧のように細かい雨粒が自分の周りを取り巻きます。繊細な白い花、葉っぱにも細かい雨粒が降り注ぎます、音もなく。

それは、ウッドアネモネ(和名:ヤブイチゲ)の花です。白い花びらは、正確には、花びらではなく、萼片(がくへん)と呼ばれるものです。

ウッドアネモネの別名は、ウィンドフラワーです。そのまま日本語にすれば、風花(かざばな)ですが、風に吹かれて舞う雪、全く違うものですね。

私の手元にある、1958年に出版されたB.D. Inglis著の、『英国の野草』(Wild Flowers of Britain, Nelson出版, 1958)に、ウィンドフラワーと呼ばれる由来が書かれています。ー『ウッドアネモネの上を風が吹いた時だけ、花開くと言われている』ー 著者は、それについて、外見とは違い、むき出しの森の中で、早春の荒々しい強風の吹き荒れる気候に耐える強い野草だと書いています。キンポウゲ科の中でも弱々しく見えますが、意外と細い茎は、強風にあおられてもへし折れないほど強いのだそうです。

雪のように白い花びらが風に舞う様を想像すると、風花という名も合っているのかもしれません。でも、私が目にするウッドアネモネは、風の強い日でも、風から守られた森の中で静かに花を咲かせています。

ウッドアネモネを、インターネットで検索していたら、突然、懐かしい花の妖精のイラストが現れました。エドワード朝時代に活躍した女流画家(イラストレーター)であり、詩人でもあるC.M. Barker(シシリー・メアリー バーカー)のイラストです。(3月に紹介した、同じくエドワード朝時代の女流画家で植物研究家のEdith Holdenより少し後の時代に活躍)

大昔、私が子供のの類を買って点数を集めると、彼女の「花の妖精シリーズ」の本がもらえるという企画にまんまと乗り、1冊を手に入れたのでした。当時、洋書など目にすることなどほとんどなかったので、嬉しくて、何度もそれぞれの花の精の絵を丹念にながめたものです。幸いなことに、手元にありました。(といっても、娘が見つけ出してくれました。娘に感謝)

彼女のシリーズには四季と、さらに4種類の本があります。そして、私が持っていたのは、ばっちり「春」。その中に、ウッドアネモネの妖精の女の子と、詩(私の拙訳)があります。ここに描かれた妖精は栗色でゆるくカールしたロングヘアで、うす桃色のドレスを着たスレンダーな女の子。ウッドアネモネの多くは白ですが、うす桃色の花もあるからでしょう。ウッドアネモネの花を2輪、両手に抱えて、風が吹けば今にもダンスを始めそうな様子です。



THE SONG OF THE WINDFLOWER FAIRY
ウィンドフラワーの歌

While human-folk slumber, 人間たちがまどろむ間
The fairies espy 妖精たちは
Stars without number 数えきれないほどの星が
Sprinkling the sky. 空にちりばめられているのを見つける
The Winter's long sleeping, 冬が長い眠りについている間
Like night-time, is done; 夜の間眠るように
But day-stars are leaping でも昼間の星たちは飛び跳ねてる
To welcome the sun. お日さまを歓迎したいから
Star-like they sprinkle 星のように
The wildwood with light; 荒々しい森に光をちりばめる
Countless they twinkle- 数えきれないほど
The Windflowers white! ウィンドフラワーの白がきらめく!


(Flower Fairies of the Spring, Cicely Mary Barker)
(春の花精より シシリー・メアリー・バーカー、1923)


まもなく、白い星のようにまたたくウッドアネモネが、森の中にいっぱい見られるでしょう。







2015年3月1日日曜日

弥生ー3月:春を告げるプリムラ Primrose March 2015

弥生ー2月:プリムラ・ブルガリス
March: Primrose

野性のプリムラ


(Primula vulgaris, Primulaceae family)
(サクラソウ科 サクラソウ属)




最初に、野性のプリムラを見つけたのは、ずいぶん前、スイスか、南ドイツの黒い森地帯の森を歩いていた時です。日本で見知ったプリムラは、ピンク、赤、紫、まっ黄色などの原色まぶしい花を咲かせていたし、公園や庭先でしか見かけたことがなかったので、意外でした。日陰でひっそりと、淡いクリーム色の小さな花を咲かせるプリムラ、早春に彩りを与えてくれるのです。

英国ウェールズへ住み始めてからも、早春になると、森の中や、ちょっとした野原の片隅などでプリムラを見つけるのが楽しみになりました。

このブログを書き始めて、カレンダーに載せた植物について調べるようになりました。今回も、意外な発見がありました。私の持っている古い植物の本、Wild Flowers of Britain (B.D. Inglis, 1958, Nelson)、この中のイラストで気づきました。

花のタイプには、2種類あるのです。花弁も葉っぱも変わりません。が、雄しべと雌しべのつき方が微妙に違うのです。全く気づかなかったとは! 自分の撮った写真をいろいろ見てみると、本当に違うのです。まん中の部分が、丸く平たい待ち針のように見える'Pin-eyed'(平たいまち針の頭)タイプがあります。これは、雌しべが花弁の所にまで出てきて、花粉のついた雄しべは見えません。もう一つは、'Thrum-eyed'(毛のような粉のようなものが花冠のまん中に見える)タイプ。花粉のついた雄しべが上の方にあり、雌しべは下部にあって見えません。

同じタイプ間では交配ができず、この異なった2タイプの花の間で交配が行われるそうです。それを担うのは、花蜜を求めてやってくる昆虫。

プリムラの花蜜は花弁の底にあります。針の目タイプの蜜にありつくには、蝶などの昆虫が、ストローのような口吻(こうふん)を伸ばさないといけません。その際、花弁の半ばあたりにある雄しべの花粉に触れます。花粉のついた口吻、昆虫ですから、ぬぐうこともせずに、近くにある、'Thrum-eyed'(毛のような粉のようなものが花冠のまん中に見える)タイプの花へ移って、花蜜を吸いに行きます。当然のことながら、もう一方の花粉をつけてきた口吻で吸いますから、花弁の半ばにある雌しべにもう一方の花粉をつけることになります。蝶などの昆虫たちは、あっちへ飛び、こっちへ飛びしますから、そのうちに両方のタイプの花の受粉が完了するという訳です。


'Pin-eyed'(平たいまち針の頭)タイプ
花弁のまん中に見えるのは、雌しべ

'Thrum-eyed'(毛のような粉のようなものが花冠のまん中に見える)タイプ
花弁のまん中に見えるのは、雄しべ

これらについての詳細な説明は、東デヴォンにある Offwell Woodland and Wildlife Trust、 ウェールズにあるFirst Natureの2つのウェブサイトに掲載されています。(でも、写真は、私所有のものです)

花について、かなり熱っぽく、長々と書いてしまいました。

ようやく葉について。野性のものは、小型で、葉の長さも10センチから15センチくらい。鮮やかな濃い緑の白菜のように、しわが深く入り込んでいます。なんだか食べられそうでしょう。私は試したことがありませんが、ほんのり甘味があって、もちろん食べられるようです。The Hedgerow Handbook: Recipes, Remedies and Rituals (Adele Nozendar著, Square Peg社, 2012)という本の中に、葉を使った面白いレシピがあります。

材料は、水1.7ℓ、砂糖300g、プリムラの葉500g、イースト10gだけ。イーストというのだから、発酵させます。何だかわかりますか? お酒ではありません。お酢、です。仕込んでから1か月半かかってようやく使用できるそうです。

きのこ以外の野性の植物なら、何でも試してみたい私ですが、これは想像だけにとどめておきます。プリムラの葉、500gというのはかなりの量です。森などに点在するプリムラをむやみやたらに採取したくないのです。でも、たくさん採っても困らない、例えばイラクサの葉などで試してみるのも良いかも。

凹凸のはっきりした葉、これを更に近づいてみると、さらに細かな葉脈が縦横に走っています。花の方は、ナメクジやカタツムリなどに食べられた跡を見かけても、葉の方は見たことありません。このでこぼこは、食べられないようにするためにあるのかもしれないですね。

3月に入ると、プリムラのクリーム色の花は、いち早く春の雰囲気を醸し出してくれるのです。


2015年2月15日日曜日

2月の春めいた日曜に:森の中の川沿いを歩く

これは、今日ではなく、先週の日曜、春めいた日ざしの明るい日曜でした。近くの公園のインフォメーションセンターで見つけた、この辺りのウォーキングマップ。10種類もあるのですが、その中の一つ、「鮭の川登りウォーク」と名付けられたウォーキングコース。前々から、ウォーキング好きの友人がフェイスブックにアップしている写真にあったコースで、目をつけてました。大好きな森のはずれに位置する川沿いを歩くコースです。まだ、歩いたことがない場所でしたが、このウォーキングマップ、非常に明確な地図が示されている上に、写真でポイントごとのサインまで明示してあります。これなら、初めてでも迷わないだろうと、試しに歩いてみることにしました。


小さな村はずれに車をとめ、川の方へ向かうと、ウォーキングマップの中の写真に示されている通りのサインが。そこから、川のほとりの道へ。道と川の間は、笹やら蕗やら、葦やらが繁っているので、川へは近寄れません。



さらに川上へと歩いていくと、あちこちに倒木が横たわっています。ある木は、川の中(写真上の奥)に、ある木は森の中、ある木(写真上の手前)などは道をさえぎってます。川の中など、木にいろいろなものがひっかかり、鮭など泳いでいけないんでは、と心配がよぎります。秋は大丈夫だったんだろうかしら?



倒木は、そのまま朽ち果てていっています。かなり朽ち果てた木の幹には、びっしりと苔やらシダやらキノコが生えています。見事なくらい。ほとんど陽のささない丘と丘の間の川べりに、午後の太陽が射しこんで、苔を照らし、荘厳な雰囲気をかもしだしていました。谷間に太陽が射すということは、春も近づいてきている証拠。



ウォーキングコースは、川べりから離れて、丘の上へ出ます。その端の日陰に、野性のスイセンが小さなつぼみをつけて群生していました。



丘の上に出るとまぶしい陽の光。裸の木々も春の芽吹きの準備。




のんびり歩いていたら、いつの間にか、4時近く。コースは終わり、牧場の横を通ったら、牛たちがちょうど夕ご飯の干し草を食んでいました。そのうちの1頭が、大きな大きな黒目がちの瞳をこちらに向けていました。

このウォーキングコースで、出会ったのは、ほんの4、5人。とても静かな早春の道歩きでした。

2015年2月1日日曜日

如月ー2月:スノードロップ Snowdrop: February 2015


如月ー2月:スノードロップ

一番に春を告げる可憐な花

(Galanthus nivalis, Fair Maids of February, lily family)
(ヒガンバナ科 ユキノハナ)




'Fair Maids of February' ー 二月の可憐な娘たちー とでも訳したらよいでしょうか。'Fair'という形容詞には、さまざまな意味合いがあります。直接的、視覚的に訳せば、濁りのない、清々しい白い花びらの色から、「色白の」という訳が適当でしょうね。でも、色白の'Maid' (少女、娘、乙女)というのであれば、雰囲気から「美しい」とか「魅力的」な感じにも受け取れます。清々しい白と、少しぼうっと霧のかかったようなうす青緑色の葉の印象から、あっけらかんと明るい夏の花達とは違って、私は「可憐な娘たち」と呼びたいのです。(ちなみに、朝日新聞社の『花おりおり』2003年第8版では、「二月の美しい少女」となっています)

私の手元に、20世紀初めに出版された復刻版(といっても、それも1977年出版の古本)の『エドワード朝の一婦人によって書かれた田園日記』(原題:The Country Diary of An Edwardian Lady)があります。作者のイーディス・ホールデン(Edith Holden)は、日本でおなじみの『ピーターラビット』の作者、ベアトリクス・ポッターと同じ時代を生きた女性です。ポッターと同じく、彼女もナチュラリスト、自然主義者として、自然の中の生物の描写を数多く手がけたそうです。20世紀の初め、この二人の女性が、イラストレーターとして活躍するまでの背景は、おそらく大変なことだったでしょう。

話がそれましたが、ホールデンの本の、「2月」の章で、'Fair Maids of February'という言葉を見つけたのです。スノードロップの描かれたページには、19世紀前半に活躍した詩人、Hartley Coleridgeの2月についての詩が引用されています。うちの町に、Coleridge Avenueという通りがありますが、おそらくこの詩人の名を取ったのでしょうね。でも、詩については全く知りませんでした。また余談。

「…まるで揺らめく青白い火のように、冷たい大地を緑の鋭い葉で貫く…」

なんだか、氷の女王のような印象を受けますが、実際は、小さくて可憐です。葉っぱも、スイセンに似て、先っぽは、とんがっていません。ちなみに、スイセンもスノードロップもヒガンバナ科に入るので、葉っぱが似ているのですね。

うちの庭に毎年、同じ場所に登場するスノードロップは、10㎝あるかないかの高さで、小さくかわいらしいものです。

前回のブログに書いたように、今年は、1月の半ば頃に、すでに小さなつぼみをつけ始めました。Woodland Trustという英国の森林やそこに生息する動植物を保護維持するボランティア団体によれば、スノードロップを初め、春先に花咲く植物は、過去25年ほどの間の観察で、毎年、開花が早まっているそうなのです。温暖化の影響なのかもしれないですが、1月あたりに、気温が高まり、春のような陽気に、植物だけでなく冬眠していたカエルなどの動物たちも活動を始めてしまうことも。ただし、寒の戻りで、霜が下りたりすると、やわらかい繊細な若葉や、動物たちはダメージを受けてしまう危険があるのだそうです。

Woodland Trustの運営するフェイスブック・ページには、1月下旬から続々とスノードロップ開花の写真が、寄せられています。つい先日には、うちの町にある、オープンして間もない花屋さんの店先に、小さなつぼみをつけたスノードロップの小鉢が並んでいました。

「2月の可憐な娘たち」が「1月の可憐な娘たち」と呼び名が変わってしまわないように!






2015年1月22日木曜日

大寒に入りました、冬も終盤に

つい先日、今週の初めのこと、ある方が「大寒」に入ったことを書かれておられました。友人から頂いた『日本の七十二候』(普游舎/2014)を開けて、暦を見てみると、今週の1月20日から2月3日までの15日間。

今まで、太陰太陽暦に基づいた、七十二候どころか、二十四節気というものも、あまり意識していませんでした。もちろん、季節の移り変わりを野外で見つけることは大好きなのですが。節気でいうと、冬の期間は、「立冬」「小雪」「大雪」「冬至」「小寒」「大寒」の6節気に分かれているんですね。「立冬」「冬至」くらいしか、意識したことがなかったです。「小寒」「大寒」も耳にしていたものの、「大寒」が、冬の節気の最後にあたるとは、全く知らなかったのです。

太陰太陽暦は、太陰暦と太陽暦を合わせ、季節のずれが出ないように調整された暦なのだそうです。七十二候というのは、二十四節気をさらに3つ、「初候」「次候」「末候」に分けた暦なのですね。

つまり今日、1月22日は、「大寒」の「初候」と呼ばれるのです。

前置きが長くなりました。

「大寒」に入り、あと2週間弱で、「立春」、春の到来となるのです。冬も、終盤に入ったのだなあ。

単なる暦の上だけではないです。特に、この辺り、英国の南ウェールズ地方は、英国でも気候が穏やかで、冬でも零下に気温が下がることも滅多にありません。

春の兆しは1月の終わり辺りから感じることができます。冬至を過ぎれば、太陽の光が日一日と、明るくなってくるのがわかります。冬の間は、ぼうっと黄味がかった日射しだったのが、少しずつピントがあって、外の輪郭がきりりとしてきて、色もはっきりしてくるような。

うちの庭にも、春のきざしを見つけました。


ハシバミの黄色い雄花。ハシバミというより、ヘーゼルナッツの木という方が馴染みあるでしょう。雌花もあるのですが、赤いガクのついた2、3㎜ほどの小さい小さい花です。枝の節のところどころについているのですが、目をこらさないと見つかりません。

 

冬の殺風景な庭に彩りを与えてくれるのが、これも黄色の、マンサクの花。英語名は、witch hazel(ウィッチ・ヘーゼル)。ヘーゼルという名がついていながら、マンサク科(Hamamelis/ハマメリス)、カバノキ科のハシバミとは全く別の種類です。細いリボンのような花は、結構長いこと、1か月以上は枝についていて、目を楽しませてくれます。ハマメリスは、止血作用があるとかで、子供たちが小さい頃から鼻血止め用のホメオパシーのレメディを常備しています。自分でレメディを作るつもりはないけれど、この木を植えたいなと思い立ったのが数年前。半日陰ながら、毎年、1月になると、黄色い花をいっぱい咲かせてくれます。


そんな半日陰の茂みの下では、ひっそりと緑の芽を出してきている植物たちがあります。トネリコの大木の葉が、秋にどっさり落ち、その下で寒さから守られているのでしょう。1月を過ぎると、lords-and-ladies( ローズ・アンド・レイディス、学名:Arum maculatum /アマムシアルム)のつややかな緑色の葉っぱがお目見えします。サトイモ科なんだそうですが、初夏に咲く花を見ると、この名前の意味がわかります。まるで、貴族がハイカラーの装束を身にまとった姿のようなのです。今は、このつやつや鮮やかな緑だけですが。

そして、スノードロップ。うちの庭には、いつも1月半ばになると、同じ場所に、ちょこっと顔を出してきます。今年も、前日の大嵐の雨しぶきで泥だらけになりながらも、可愛らしい姿を表わしました。うちのスノードロップは、小さく、10㎝にも満たないほど。来週辺りに花が開きそう。歳時記では、「フキノトウ花咲く」です。英国ウェールズでは、スノードロップ。まもなく冬も終わりです。










2015年1月1日木曜日

「明けましておめでとうございます」 睦月ー1月:セイヨウアザミ Ground Thistle: January 2015 

新年あけまして

おめでとうございます

ブログを立ち上げ、3年目に入ります。日本語ブログも、昨年から始めました。3年目になった英国の葉っぱカレンダー作り。最近は、切り絵を中心に制作していますが、カレンダーは3年前から同じ、日本のビニール板を使ったレリーフ版画。

今年からは、カレンダーに登場する植物の話を毎月書くことにしました。選んだ12種類の葉っぱには、それぞれ愛着があります。英国ウェールズの自然の中で見つけた、ささやかな草木の物語、みなさんにも共有して頂けると光栄です。

これからもよろしくお願い申しあげます。


睦月ー1月:軸なしアザミ

真冬の野原で見つけた、一風変わったアザミ

(Ground Thistle, stemless thistle, Cirsium acaule, stemless thistle, daisy family)





冴え冴えとした寒い朝。といっても、英国の西南部、ウェールズ州の東南部のこの辺りは、零下になることは滅多にありません。気温6℃。しかし、冬の寒さを噛みしめるには十分な寒さ。雨がちな冬の毎日、時には晴れ間も出ます。そういう時、近くの野原や森へ散歩へ行きます。

我が家のある住宅街のはずれから次の住宅地、村に至るまで、馬や羊の農場があり、その間に野原や林やらがあります。牧草地や野原は、一面、青々とした緑。こちらの芝生は、日本と違って、柔らかい葉で冬の間も枯れない種類のようです。芝生を歩いていくと、芝生だけでなく、実にたくさんの野草が見え隠れしているのを発見します。(だから、なかなか散歩にならない。道草ばっかり)

クローバー、タンポポ、キンポウゲ、オオバコなどが、踏みつけられて平たくなりながらも健気に緑の葉を芝生の間で張り出しています。その中に見つけたのが、セイヨウアザミの1種、ground thistle、名前の通り、地面に這いつくばって生えるアザミです。またの名を、stemless thistle、これも外見から、茎なしアザミ。

一口にアザミ、こちらではセイヨウアザミ、といってもその種類は数えきれないほど。アザミはデイジー(ヒナギク)に属する、非常に生命力の強い野草です。私が野原で見つけたこのアザミも、踏みつけられて、平たくなったのかと思いました。

このアザミの名前を見つけ出すのは一苦労でした。よく似た小さな種類に、dwarf thistle、小型アザミがあります。同じように、野原などで見かけます。花も小さいですが、葉も小さく、先端や切れ込みにあるトゲもそんなに刺々しくありません。茎なしアザミの方は、葉が大振りで、表面には細かい毛がびっしり、トゲも長く鋭く、素手では触れそうにもありません。

この茎なしアザミを見つけた朝、葉の表面の細かい毛の1本1本が朝露に包まれ、芝生やクローバーなどの鮮やかな緑の中に、ぼうっと幻想的な青緑色に浮かび上がったように見えたので、見つけたのでした。夏であれば、他の草も高く生い茂って気がつかなかったでしょう。

ところで、私の持っている本の中に書いてある一節(英語版の方に掲載しています)によると、茎なしアザミは、昔ほど見られなくなったということです。石灰質の原っぱや丘(英国南部は、石灰質の土地が多い)が小麦畑に開拓されたことが一因のようです。小麦は、やや酸性がかった中性土質で生育するので、石灰質を好む茎なしアザミが育ちにくくなったこともあるだろうし、除草剤によって枯れ果てていったとも言えるでしょうね。

となると、私が見つけた茎なしアザミは、衰退しつつある貴重な植物の一種? もちろん、農業、園芸の観点からすると、雑草です。が、人間の勝手で変えられていった自然の土壌から一方的に追い出されていった茎なしアザミ。こんなところで、それでもしっかりと根づいているのを見つけて、嬉しくなりました。

茎なしアザミが生えている野原は、我が家のある町と隣村の間にあります。この辺りは、海辺に近い丘陵地帯で、町や村などの集落は、野原や森などに囲まれています。でも、今では野原や森が、町や工場地帯に囲まれているという方が的確かもしれない。。。

夏の終わり頃、雨が降らずに乾燥した日が続くと、ふわーりふわりと、野原辺りを綿毛が飛んでいきます。農地から追い立てられた茎なしアザミの綿毛も、いつかずいぶん前に、やってきたのかもしれません。

衰退しつつある野草は、英国の中だけでも数えきれないほどあると思います。私の英国葉っぱカレンダーにも、これから何種類か登場しますので、お楽しみに。