2016年4月30日土曜日

皐月*5月: レッドカンピオン Red Campion

皐月*5月

レッドカンピオン

Attractive Vivid Pink 

 鮮やかなピンクは夏の始まりに

Silene dioica
Order: Caryophyllales
Family: Caryophyllaceae
Genus: Silene

ナデシコ目ナデシコ科マンテマ属

生育場所:半日陰あるいは日なた(生垣、森など)地域:英国全域

*日本では「レッドキャンピオン」とアメリカ英語的発音で表記されています。これは、英国英語の発音です。




5月です。日本は、すでに牡丹や藤の花が咲き誇っているようですね。夏日もあるようで、すでに初夏というより、夏の陽気ですね。こちらの、今年の4月は気温が平年よりずっと低くて、寒い毎日でした。ついこないだのニュースで、4月の降雪量が、昨年末の12月よりも多いという異常な記録だったと報じていました。もう5月です、いい加減に、暖房から解放されたいです。

野原は、それでも少しずつ色みが増えていっています。4月の下旬になってようやく、スピノサスモモという野生のスモモの小さな白い花が霞をかけたように満開でした。森や生垣などの端っこには、まだまだクリーム色のプリムラが咲いています。

そろそろ、この濃いピンクのレッドカンピオンが生垣やら森の周りに咲き始める頃です。レッドカンピオンは、ナデシコの仲間。花びらの形から雰囲気的に、サクラソウの仲間かと思っていました。ナデシコといえば、花びらの先がリボンを割いたようになっていて、サクラソウの方は、レッドカンピオンと同じように、真ん中で切れ目が入っているので。

レッドカンピオンをよく見ると、花びらが、なんともハートの形に見えてきて可愛らしいなと思います。

5月です。天気予報を見ると、まだまだ初夏という気温には程遠いですが、そろそろレッドカンピオンの鮮やかな濃いピンクの花を、あちこちで見かけるようになるかな。




2016年4月7日木曜日

春の切り絵スクリーンプリント:「森のブルーベルと小さなネズミたち」

New! スクリーンプリント


'森のブルーベルと小さなネズミたち'

10 x 10 cm (21 x 21 cm 無漂白紙 270gsm

3色刷り(水性アクリル絵具)

春をテーマにした新しいスクリーンプリントがようやくできあがりました。

新しいシリーズを作るにあたり、サイズをどうしようか考えた末、やはり正方形(10x10cm)の小さな作品を続けて制作することにしました。昨秋の個展に合わせて制作した小作品シリーズは、2色刷りでしたが、今回は1色増やして、3色刷り色刷りにします。写真では、黒に見える背景は、実はこげ茶色です。

オリジナルの切り絵の制作完了した後、コンピュータに画像を取り入れて、着彩パターンを作って、カーディフ市内(英国ウェールズ州の州都)にあるスクリーンプリント工房を持つ「Printhaus 」へ、スクリーンプリント作成を委託しました。切り絵やイラストをこなすことはできますが、かなりの力仕事になるスクリーンプリントは、手首を痛めた私には無理なのです。

 Printhaus は、ローカルアーティストを支援する非営利のアーティスト団体です。アート&クラフトフェア開催や、工房と同じ敷地内にあるスタジオに入って制作活動しているアーティストのオープンデー開催、フェイスブックやツイッターで情報発信したりする支援の他、併設のスクリーンプリント工房でワークショップを行ったり、私のようなアーティストのために、スクリーンプリントの代行制作を行ったりするサービスも提供してくれます。私は、スクリーンプリントのワークショップに参加して以来、いろいろとお世話になっています。

新しい作品を出すにあたって、アメリカ発の世界的ネットワークを持つオンライン・アート&クラフトショップサイトEtsyのショップを再開する予定です。(ただし、今のところ、英国内限定ですが)


「森のブルーベルと小さなネズミたち」について:
これは、私のお気に入りの森からイメージした作品です。ブナやトネリコの木が生える森で英国の原種ブルーベルが咲き乱れるのは、4月下旬から5月下旬、ほんのわずかの期間です。(園芸種として普及しているスペイン産ブルーベルの花は、短いベルの形をしていて、原種のブルーベルの花は一回り小さく細長い)

幻想的なブルーベルの花畑に見とれてしまいますが、ここにはどれだけたくさんの生き物たちが棲んでいるのでしょう。冬眠から覚めた小さな野生のネズミたちやらカエルたち、きっと暖かくなってきた森の中で忙しく動き回り始めていることでしょう。遠くの方では、小さな生き物たちがいるのもつゆ知らず、キツネが森の中を足どり軽く歩いているかもしれません。







25枚刷りのうち、1番目は正方形のフレーム(既成)に入れました。A4サイズの短い方(21cm)に合わせてカットしてあるので、長さを調整しなくても既成のフレームに入ると思います。もちろん、オーダーメイドで好きな材質、大きさにするのも良いです。





2016年4月1日金曜日

卯月*4月 マムシアルム Lords and Ladies

卯月*4月

マムシアルム
Lords and Ladies

優雅な衣をまとった貴人

生育場所:半日陰の湿った地面(生垣、森など)
地域:英国全域

Arum maculatum
Order: Alismatales
Family: Araceae
Genus: Arum



3月のヒメリュウキンカに引き続き、4月も再び、日陰でたくましく育つ植物の紹介。

今年の春分節気は4月4日まで。4月5日からは、「清明」、春の清らかで生き生きした様子を表しているそうです。4月の天気は不安定です。日本の「春しぐれ」のような通り雨が度々あって、傘を持たずに出かけた際にはびしょ濡れになることもありますが、地面から育ち始めたばかりの植物にとっては恵みの雨です。

マルシアルムは、サトイモ科の野草です。食用のサトイモやコンニャクイモより、観賞用のアンスリウムを見ると、同じ系統の植物だとわかります。葉の形(葉の元がふたまたに分かれ、先が尖っている)や花が似ています。特に、花びらのように見えるのは、実は、仏炎苞(ぶつえんほう)、そして真ん中の、マッチ棒か、線香花火の大きい版のようなものは、肉穂花序と呼ばれるそうです。

つやつやした鮮やかな緑の葉は、実は食べられません。口にすると、非常に酸っぱく、口がヒリヒリしたり、胃腸をこわす原因になります。(原っぱでよく見かけるsorrel、スイバも酸味が強いですが、サラダに入れたり、炒めたり食用として知られています)そして、秋になると、オモトによく似た朱色のトウモロコシ風の実がなりますが、毒があります。(Poison Garden WebsiteRHS: Arum Maculatum)

ヒメリュウキンカと同様、マムシアルムも日陰で育つ割に、非常に繁殖力が強い野草です。庭にちょろっと生えているのを見つけ、そのままにしておいたら、いつの間にか、いたるところに増えてしまいました。うちの庭は、マムシアルム、ヒメリュウキンカ、それにスミレ(early dog violet)が、いたるところの隙間にびっしりと生えています。野草は大好きですが、あまりにびっしり生えると、地面は根でいっぱい、他の植物が窮屈さに悲鳴を上げてしまわないように、今年は、なんとか手を打たねば。

お馴染みになった、シセリー・メアリー バーカー(Cicely Mary Barker)の『花の精:春編』にも、登場します。小さく、素朴な野草が多い中、マムシアルムの装いは、少し気取って貴人のようです。(Cicely Mary Barker, The Complete Book of the Flower-Fairies, Warne, 2002).

ちょっと時間的に余裕があるので、手短に詩の要約を。(と思ったら、もう4月に入ってしまいました)

マムシアルムの精の歌:
私は、フォックスグローブ(別名キツネノコブクロ)のような鈴や、バラのような花びらを持っていない
イングランド*の方々を探してみたら、花びらや鈴やらカップをたずさえた花はいっぱい見つかるでしょう
でも、私のような花はありません

温室には、私の親戚たちが住んでいます
アンスリュームは、白くて繊細、
私は、そんなに背も高くなければ、風格もないけれど、
一風変わった帽子は私のもの、
それに艶やかな葉は立派でしょう
私の花穂は、あなたの目を引くでしょう
そして9月には見事な実をつけますからね
(でも、**ご注意を!)



*英国には、中心にイングランド、北にスコットランド、西にウェールズ、アイルランドに北アイルランドがあります

**赤い実には猛毒があるため



The Song of THE LORDS AND LADIES FAIRY
Here's the song of Lords-and-Ladies
(in the damp and shade he grows):
I have neither bells nor petals,
like the foxglove or the rose,
Through the length and breadth of England,
many flowers you may see---
Petals, bells, and cups in plenty---
but there's no one else like me.

In the hot-house dwells my kinsman,
Arum-lily, white and fine;
I am not so tall and stately,
but the quaintest hood is mine;
And my glossy leaves are handsome;
I've a spike to make you stare;
And my berries are a glory in September.
(BUT BEWARE!)