2016年6月4日土曜日

水無月*6月: ニワトコ Elder

水無月*6月

ニワトコ

Early Summer's Delight

 初夏の楽しみ

Sambucus
Order: Dipsacales
Family: Adoxaceae
Genus: Sambucus

マツムシソウ目 レンプクソウ科 ニワトコ属

生育場所:日当たり水はけの良い場所 地域:英国全域




全く、今年の春は平年より気温が低くて、いつまでも暖房を入れていました。が、5月の末頃から気温が上がってきたかと思うと、一気に草木が生い茂っていきました。6月に入った今、眩しい日差し、木陰、色とりどりの花は、夏を実感させてくれます。

5月、あちこちで豪奢に咲き誇った真っ白なサンザシの花は、盛りを過ぎ、ピンクがかって色あせてきました。それに代わって、ニワトコの白い花があちこちで目につくようになってきました。


ニワトコは、明るい日当たりの良い場所を好みます。生垣(英国特有の農道や農地を区切るために作られたもの)、野原の周りや公園、庭など、結構いろんなところに育ちます。その花というのは、清らかな香りを持つ白い小さな花の集まりです。(全体的にクリームがかった白に見えるのは、雄しべのせいです)葉は、トネリコに似たギザギザの切り目の入ったもので5枚1セットです。


末息子、ティーンの年頃になった今も毎年この時期を楽しみにしています。もちろん、ニワトコのシロップ(英国ではコーディアル)を作ることです。爽やかな花の香りのするシロップを炭酸水で割った飲み物は、我が家の夏の定番飲み物です。(作り方は、以前のブログにあります。elder flower cordial


昨日は、晩になってもあったかかったので、散歩に出かけました。ニワトコの白い花は、あちこちに咲き始めています。まだ、満開ではありませんが、鼻を近づけると良い香りがします。シロップにはこの香りが欠かせないので、十分花が開く時を待ちます。(知らせるのは、息子の役割)


今日は土曜日。ガーディアンという全国版新聞を買うと、週末マガジンがついています。毎週、料理人Yottamu Ottolenghiの面白いレシピがあります。今週は、なんとタイミングよくニワトコの花のレシピでした。ピクルス?!もありますが、まず試してみたいのは、アイスクリーム。天ぷら(フリッター)を添えるレシピですが、天ぷらはともかくも、シロップとクリームフレッシュ(日本でよくあるコーヒー用のフレッシュクリームや、生クリームとは違う、どちらかというと少し酸味のある爽やかなクリーム)をメインに使ったアイスクリーム。今年の夏のデザートのレパートリーに加えたいです。(興味ある方は、
Yotam Ottolenghi's elderflower's dessert )




The Song of The Elder Fairy

When the days have grown in length,
When the sun has greater power,
Shining in his noonday strength;
When the Elder Tree's in flower,
When each shady kind of place
By the stream and up the lane,
Shows its mass of creamy lace -
Summer's really come again!

 Cicely Mary Barker's Flower Fairies of the Trees(Cicely Mary Barker, The Complete Book of the Flower-Fairies, Warne, 2002)

2016年4月30日土曜日

皐月*5月: レッドカンピオン Red Campion

皐月*5月

レッドカンピオン

Attractive Vivid Pink 

 鮮やかなピンクは夏の始まりに

Silene dioica
Order: Caryophyllales
Family: Caryophyllaceae
Genus: Silene

ナデシコ目ナデシコ科マンテマ属

生育場所:半日陰あるいは日なた(生垣、森など)地域:英国全域

*日本では「レッドキャンピオン」とアメリカ英語的発音で表記されています。これは、英国英語の発音です。




5月です。日本は、すでに牡丹や藤の花が咲き誇っているようですね。夏日もあるようで、すでに初夏というより、夏の陽気ですね。こちらの、今年の4月は気温が平年よりずっと低くて、寒い毎日でした。ついこないだのニュースで、4月の降雪量が、昨年末の12月よりも多いという異常な記録だったと報じていました。もう5月です、いい加減に、暖房から解放されたいです。

野原は、それでも少しずつ色みが増えていっています。4月の下旬になってようやく、スピノサスモモという野生のスモモの小さな白い花が霞をかけたように満開でした。森や生垣などの端っこには、まだまだクリーム色のプリムラが咲いています。

そろそろ、この濃いピンクのレッドカンピオンが生垣やら森の周りに咲き始める頃です。レッドカンピオンは、ナデシコの仲間。花びらの形から雰囲気的に、サクラソウの仲間かと思っていました。ナデシコといえば、花びらの先がリボンを割いたようになっていて、サクラソウの方は、レッドカンピオンと同じように、真ん中で切れ目が入っているので。

レッドカンピオンをよく見ると、花びらが、なんともハートの形に見えてきて可愛らしいなと思います。

5月です。天気予報を見ると、まだまだ初夏という気温には程遠いですが、そろそろレッドカンピオンの鮮やかな濃いピンクの花を、あちこちで見かけるようになるかな。




2016年4月7日木曜日

春の切り絵スクリーンプリント:「森のブルーベルと小さなネズミたち」

New! スクリーンプリント


'森のブルーベルと小さなネズミたち'

10 x 10 cm (21 x 21 cm 無漂白紙 270gsm

3色刷り(水性アクリル絵具)

春をテーマにした新しいスクリーンプリントがようやくできあがりました。

新しいシリーズを作るにあたり、サイズをどうしようか考えた末、やはり正方形(10x10cm)の小さな作品を続けて制作することにしました。昨秋の個展に合わせて制作した小作品シリーズは、2色刷りでしたが、今回は1色増やして、3色刷り色刷りにします。写真では、黒に見える背景は、実はこげ茶色です。

オリジナルの切り絵の制作完了した後、コンピュータに画像を取り入れて、着彩パターンを作って、カーディフ市内(英国ウェールズ州の州都)にあるスクリーンプリント工房を持つ「Printhaus 」へ、スクリーンプリント作成を委託しました。切り絵やイラストをこなすことはできますが、かなりの力仕事になるスクリーンプリントは、手首を痛めた私には無理なのです。

 Printhaus は、ローカルアーティストを支援する非営利のアーティスト団体です。アート&クラフトフェア開催や、工房と同じ敷地内にあるスタジオに入って制作活動しているアーティストのオープンデー開催、フェイスブックやツイッターで情報発信したりする支援の他、併設のスクリーンプリント工房でワークショップを行ったり、私のようなアーティストのために、スクリーンプリントの代行制作を行ったりするサービスも提供してくれます。私は、スクリーンプリントのワークショップに参加して以来、いろいろとお世話になっています。

新しい作品を出すにあたって、アメリカ発の世界的ネットワークを持つオンライン・アート&クラフトショップサイトEtsyのショップを再開する予定です。(ただし、今のところ、英国内限定ですが)


「森のブルーベルと小さなネズミたち」について:
これは、私のお気に入りの森からイメージした作品です。ブナやトネリコの木が生える森で英国の原種ブルーベルが咲き乱れるのは、4月下旬から5月下旬、ほんのわずかの期間です。(園芸種として普及しているスペイン産ブルーベルの花は、短いベルの形をしていて、原種のブルーベルの花は一回り小さく細長い)

幻想的なブルーベルの花畑に見とれてしまいますが、ここにはどれだけたくさんの生き物たちが棲んでいるのでしょう。冬眠から覚めた小さな野生のネズミたちやらカエルたち、きっと暖かくなってきた森の中で忙しく動き回り始めていることでしょう。遠くの方では、小さな生き物たちがいるのもつゆ知らず、キツネが森の中を足どり軽く歩いているかもしれません。







25枚刷りのうち、1番目は正方形のフレーム(既成)に入れました。A4サイズの短い方(21cm)に合わせてカットしてあるので、長さを調整しなくても既成のフレームに入ると思います。もちろん、オーダーメイドで好きな材質、大きさにするのも良いです。





2016年4月1日金曜日

卯月*4月 マムシアルム Lords and Ladies

卯月*4月

マムシアルム
Lords and Ladies

優雅な衣をまとった貴人

生育場所:半日陰の湿った地面(生垣、森など)
地域:英国全域

Arum maculatum
Order: Alismatales
Family: Araceae
Genus: Arum



3月のヒメリュウキンカに引き続き、4月も再び、日陰でたくましく育つ植物の紹介。

今年の春分節気は4月4日まで。4月5日からは、「清明」、春の清らかで生き生きした様子を表しているそうです。4月の天気は不安定です。日本の「春しぐれ」のような通り雨が度々あって、傘を持たずに出かけた際にはびしょ濡れになることもありますが、地面から育ち始めたばかりの植物にとっては恵みの雨です。

マルシアルムは、サトイモ科の野草です。食用のサトイモやコンニャクイモより、観賞用のアンスリウムを見ると、同じ系統の植物だとわかります。葉の形(葉の元がふたまたに分かれ、先が尖っている)や花が似ています。特に、花びらのように見えるのは、実は、仏炎苞(ぶつえんほう)、そして真ん中の、マッチ棒か、線香花火の大きい版のようなものは、肉穂花序と呼ばれるそうです。

つやつやした鮮やかな緑の葉は、実は食べられません。口にすると、非常に酸っぱく、口がヒリヒリしたり、胃腸をこわす原因になります。(原っぱでよく見かけるsorrel、スイバも酸味が強いですが、サラダに入れたり、炒めたり食用として知られています)そして、秋になると、オモトによく似た朱色のトウモロコシ風の実がなりますが、毒があります。(Poison Garden WebsiteRHS: Arum Maculatum)

ヒメリュウキンカと同様、マムシアルムも日陰で育つ割に、非常に繁殖力が強い野草です。庭にちょろっと生えているのを見つけ、そのままにしておいたら、いつの間にか、いたるところに増えてしまいました。うちの庭は、マムシアルム、ヒメリュウキンカ、それにスミレ(early dog violet)が、いたるところの隙間にびっしりと生えています。野草は大好きですが、あまりにびっしり生えると、地面は根でいっぱい、他の植物が窮屈さに悲鳴を上げてしまわないように、今年は、なんとか手を打たねば。

お馴染みになった、シセリー・メアリー バーカー(Cicely Mary Barker)の『花の精:春編』にも、登場します。小さく、素朴な野草が多い中、マムシアルムの装いは、少し気取って貴人のようです。(Cicely Mary Barker, The Complete Book of the Flower-Fairies, Warne, 2002).

ちょっと時間的に余裕があるので、手短に詩の要約を。(と思ったら、もう4月に入ってしまいました)

マムシアルムの精の歌:
私は、フォックスグローブ(別名キツネノコブクロ)のような鈴や、バラのような花びらを持っていない
イングランド*の方々を探してみたら、花びらや鈴やらカップをたずさえた花はいっぱい見つかるでしょう
でも、私のような花はありません

温室には、私の親戚たちが住んでいます
アンスリュームは、白くて繊細、
私は、そんなに背も高くなければ、風格もないけれど、
一風変わった帽子は私のもの、
それに艶やかな葉は立派でしょう
私の花穂は、あなたの目を引くでしょう
そして9月には見事な実をつけますからね
(でも、**ご注意を!)



*英国には、中心にイングランド、北にスコットランド、西にウェールズ、アイルランドに北アイルランドがあります

**赤い実には猛毒があるため



The Song of THE LORDS AND LADIES FAIRY
Here's the song of Lords-and-Ladies
(in the damp and shade he grows):
I have neither bells nor petals,
like the foxglove or the rose,
Through the length and breadth of England,
many flowers you may see---
Petals, bells, and cups in plenty---
but there's no one else like me.

In the hot-house dwells my kinsman,
Arum-lily, white and fine;
I am not so tall and stately,
but the quaintest hood is mine;
And my glossy leaves are handsome;
I've a spike to make you stare;
And my berries are a glory in September.
(BUT BEWARE!)




2016年3月5日土曜日

弥生*3月  ヒメリュウキンカ Lesser Celandine

弥生*3月

ヒメリュウキンカ
Lesser Celandine

木陰にぴかぴか黄色い花びら


生育場所:半日陰の湿った地面(生垣、森など)
地域:英国全域

Ranunculus ficaria
Order: Ranunculales
Family: Ranunculaceae
Genus: Ranunculus



3月3日のひな祭りもすぎました。5日。七十二侯では、「草木萌え動く」(そうもくめばえ動く)「雨水」の最終日です。野山や木々に緑が芽吹き出す季節に入るのですね。(『新版:日本の七十二侯』普遊舎、2013年版)

この辺りは、ブリストル海峡に面した地域で、瀬戸内海辺りの気候によく似ています。朝、家の近くを歩くと、まだまだ寒の戻りがあったりして、日陰には霜が降りていたりします。が、よく見ると、あちこちに若芽や蕾が春の気配を感じてすでにふくらみ始めています。

ヒメリュウキンカは、春の花の中でも、早くに開花し始めます。日向ではなく、ちょっと湿った木陰などに、小さな花を咲かせます。木陰などの暗いところで、明るいレモン色で、つるっとてかりのある花びらは、すぐに目につきます。クリーム色のプリムラや、白いスノードロップと並び、早春に咲き始める花です。今年も、2月半ばくらいから目につき始めました。

英語では、Lesser Celandine(レッサー・セランディン)というヒメリュウキンカは、キンポウゲ科の野草です。原っぱなどに生えるキンポウゲ科の黄色い花の多くは、同じようにてかりのある花びらですが、ヒメリュウキンカは、茎が短く、葉が地面をおおうようにして生えています。花は、8枚の花弁からなり、これまたツヤのある葉は、ハートの形をしていて、中央からびっしりと大中小の葉がぐるりと取り巻いています。根茎で簡単に増えていくので、うちの庭の北西、ガレージの北側は、初めは芝生が生えていたのが、ほったらかしにしていたら、ヒメリュウキンカがびっしり生えてしまいました。なんとかせねば。

今月も、シセリー・メアリー バーカーの花の妖精の詩から:
(Cicely Mary Barker, The Complete Book of the Flower-Fairies, Warne, 2002).

Hawthornは、サンザシ。サンザシの花は少し遅く5月、まず先に葉が出てきます。その葉よりも先に、黄色いヒメリュウキンカの花が、日陰で星のように明るく咲いているようすですね。

The Song of the Celandine Fairy
Before the hawthorn leaves unfold,
Or buttercups put forth their gold,
By every sunny footpath shine
The stars of Lesser Celandine.

明日は、第七侯「啓蟄」に入ります。「巣籠りの虫戸を開く」冬眠していた虫や生き者たちが、そろそろ活動を始める頃です。イースターもあと数週間でやってくると春らんまんです。

2016年2月1日月曜日

如月*2月: ヒナギク Daisy

如月*2月

ヒナギク
Daisy

小さくてもしっかり者の白いヒナギク


Bellis perennis
Order: Asterales
Family: Asteraceae
Genus: Bellis

キク目
キク科
ヒナギク属

生育場所:日当たりの良い草地
地域:英国全域


デイジー、あるいはヒナギクといえば、日本では栽培品種が一般的ですが、英国をふくむヨーロッパでは、野生のデイジーが日当たりのよい庭の芝生や、草地に生えています。タンポポと同じくらい、普通にどこでも生えています。ずいぶん前、ヨーロッパに来て初めて白い小さなかわいらしい花が公園の芝生に咲いているのを見て、感動しました。そのうちに、あまりにも当たり前に、あちこちに生えているので、あの頃の感動は薄れてしまいましたが。

白い小さな花は、直径3センチにも満たないほどで、緑の肉厚の葉は地面に放射線状にしっかりと広がって生えています。その真ん中から、細い茎が伸び、花が次から次へと咲いていきます。1セットのデイジーは隣同士くっついて増えていきます。庭の芝生には、いつの間にかデイジーのコロニーがあちこちにできて、花ざかりの初夏などは庭が白い花でいっぱいになります。とはいえ、コロニーは芝生の生えるすき間を与えないので、芝生はどんどん退化していくので、なんとも複雑な心境です。芝生の手入れをしていないということです。

ヒナギクは、春から秋まで次から次へと花が咲き続けます。冬でも気温が零下になることがめったにないウェールズの南東部(ロンドンから西へ200㎞ほど)のこの辺りは、春の訪れが早く、ヒナギクも2月あたりから咲き始めます。

日当たりのよい場所に咲くヒナギク、朝日が昇って太陽の光が当たると、白い花弁は次第に開いていきます。そうして、夕方になり気温も下がってきて太陽が沈む頃には、いつの間にか小さな丸い花は花弁を閉じます。

日本では、クローバーやレンゲの花かざりを作るのが子供の頃の思い出にあります。こちらでは、クローバーに、デイジーの花かざりを作るのが一般的です。芝生のある公園などを歩いていると、親子で花かざりを作っているのを見かけたりします。ちっちゃな子供が、白いデイジーの髪かざりをつけているのを見ると微笑ましいです。私は、クローバーの花を一つずつ花冠を引っかけて編んでいっていましたが、こちらの人たちは、デイジーの花の茎の下の方に爪かピンか何かですき間を作り、そこにもう一つのデイジーの茎を通して花冠を留めるというやり方をしています。はかなげな花かざりのできあがり。

英国の挿絵画家、シシリー・メアリー・バーカー(Cicely Mary Barker 1895-1973)は、日本でもよく知られた「花の妖精シリーズ」の「春編」で、デイジーの妖精を描いています。デイジーの花かざりを頭につけた、小さな女の子です。その妖精の詩には、赤ちゃんの花とあります。そう、白い純真な赤ん坊のようなデイジーの花、でも実は、生命力おう盛でめったなことで枯れたりしない、力強い野草なのです。



The Song of the Daisy Fairy

Come to me and play with me
I'm the babies' flower;
Make a necklace gay with me,
Spend the whole long day with me,
Till the sunset hour.
I must say Good-night, you know,
Till tomorrow's playtime;
Close my petals tight, you know,
Shut the red and white, you know,
Sleeping till the daytime.

(from Flower Fairies of the Spring by Cicely Mary Barker, The Complete Book of the Flower Fairies, Warne, 2002)

2016年1月10日日曜日

睦月*1月: ワラビ Bracken

睦月*1月

ワラビ

白灰色が織りなす繊細美


Pteridium aquilinium
Order: Dennstaedtiales
Family: Dennstaedtiaceae
Genus: Pteridium

シダ目
コバノイシカグマ科
ワラビ属

生育場所:日当たりの良い場所
地域:英国全域


遅ればせながら、明けましておめでとうございます。すでに1月も半ばにさしかかりました。

英国南ウェールズの1月は、12月に引き続き、たいがい雨が多くジメジメしています。今冬は、特に雨がことさら多く、英国イングランド北部などは深刻な洪水、浸水被害が12月から出ています。1月に入っても、さらに通り雨の毎日が続いています。今日などは、アラレまじりの通り雨が何度もあって、気温も下がってきました。もう冬至も過ぎ、立春も近くなってきて、日差しも少しずつ明るくなってくるし、雨はこれくらいにしてほしいです。

昨年の1月のことです。あの時は、雨が降っていなくて、でも曇りがちの肌寒い週末の午後、いつものお気に入りの森へ散歩へ出かけました。

森の入り口と、農地が開けた間の草地で私たちの目を引いたのは、美しい霞みがかったような白灰色のワラビの一群でした。白灰色の枯葉は、周囲の鮮やかな緑の草たちと対照的。(ここ、南ウェールズでは、芝生などの草は、冬の間も枯れずに鮮やかな緑のままなのです)

シンプルな静の美しさです。とてもデリケートな抜け殻のような、きれいに乾燥した前の年の緑の葉は、今は茶色の茎から白灰色の葉を右往左往に垂らしていました。近寄ってみると、そこには、さらに小さな三角が形作る小さなクリスマスツリーのような葉がカギ状に規則正しくならんでいます。それが無数に並び、重なりあって、白灰の世界は幻想的に見えるのです。


日本人にとっては当たり前すぎますが、ワラビはシダ綱に属す植物です。こちらへ来るまで、しかし、知らなかったことは、ワラビは山間部に生えると思っていたら、こちらでは日当たりの良い草地に育つということです。このワラビも、森の入り口の日当たりの良い場所にあります。群生しているところは、多くが荒地(酸性土壌を好むからでしょう)など、低木か草しか生えないような所です。ウェールズなので、そういう場所には羊がよく放牧されています。

英国では、ワラビの若芽は、ほぼ100%無視されています。こちらでは、有毒だという認識が強いからです。そのために、春のワラビ採りの季節になると、悠々と集めることができます。アク抜きさえ、しっかりして、身の丈にあった分だけ旬の味を楽しめたらそれで十分です。ワラビの若芽が出てくるのは、まだまだ先です。